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運動は朝にする?夜にする?それぞれのメリットを研究結果から解説

健康のため、ダイエットのため、美しいボディを手にいれるためなど、さまざまな目的で運動をする人は増えています。しかし一方で、これから運動を始めようと思っている場合、朝に運動をする方が良いのか、夜に運動を行う方が良いのか知っている人は少ないのではないでしょうか。本記事では、朝と夜、それぞれの運動習慣のメリットについて、各種研究結果から解説します。

運動習慣を持つ女性は少ない

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(令和元年)によれば、運動習慣(1回30分以上の運動を週2日以上実施し、1年以上継続していること)のある人の割合は、20~64歳の女性で16.9%(男性23.5%)、65歳以上の女性で33.9%(男性41.9%)です。64歳以下の女性では、5~6人に1人が運動習慣を持っていると言えます。この割合から見る限り、運動を習慣的に行う女性は比較的少数派と言えるのではないでしょうか。

同調査からは、運動を行うことが習慣化しない主な理由として、「時間がない」「忙しい」が挙げられています。これを考えると、もはや運動を行う時間帯を選んでいる場合ではなく、「できる時に行うこと」がまずは肝心ではないでしょうか。そして、大切なことは継続して運動することです。その中で運動を行う時間を選べれば理想的と言えるでしょう。

次章からは、朝と夜に運動を行うそれぞれのメリットをご紹介します。

朝に運動するメリット


まずは、朝に運動を行うメリットからみていきましょう。

朝は運動しやすい!

これまでの研究では、12週間の運動プログラム(週あたり250分間)への参加率は、夕方~夜(午後4時~7時)より朝(午前6時~9時)に運動を行った人のほうが比較的高かったと報告されています(Brookerら、2019年)。

忙しい1日の終わりではすでに疲労していることも多く、運動参加への意欲が低下していることもあるかもしれません。それに比べて、しっかり睡眠を取った後の朝は、心も体もリフレッシュしていて運動を行うにはよさそうです。朝が苦手な人もいるかもしれませんが、朝の運動習慣にはさまざまなメリットがあります。

ダイエットには朝の運動がいい

最近の研究(Arcieroら、2022年)では、朝に運動を行ったほうが、夜に同じ運動を行うより体脂肪量と腹部の脂肪量が著しく減少したことが報告されています。この研究は、平均年齢42歳の女性30名を、朝(午前6時~8時)もしくは夜(午後6時30分~8時30分)のどちらかに運動を行うグループに分け、週4回(1時間前後/回)の運動(筋力トレーニング・スプリント運動・ストレッチング・有酸素運動を各回にそれぞれ)を12週間行わせ、その前後で運動の効果を比較しています。

同様に、それ以前の研究(Alizadehら、2017年)でも、6週間の有酸素運動を行った48名の女性では、体重、腹部の皮下脂肪厚、腹囲が朝に運動を行ったグループで減少したことがわかりました。また、朝に運動を行った女性では、夜に同じ運動を行った女性より摂取カロリーが抑えられたことも示されています。

朝の運動でエネルギー消費量が増える

前述のように、運動を行う目的が減量やダイエットの場合、同じ運動を行うにしても朝に行う方がより効果的でしょう。これは、朝に運動を行うと1日を通してエネルギー消費がより高まりやすいことが理由として考えられます。これなら、朝が苦手な人でも朝に運動を行う意欲が高まるのではないでしょうか。

夕方〜夜に運動するメリット


では、夕方〜夜にかけての運動には、どんなメリットがあるのでしょうか。

夜は筋力が高まる!

先述の女性30名(平均年齢42歳)を対象にした研究(Arcieroら、2022年)では、朝に運動を行ったほうが体脂肪量などは減少しやすかった一方で、筋力(ベンチプレス・腕立て伏せ)やパワー(ジャンプ力など)といった筋のパフォーマンスについては夜(午後6時30分~8時30分)に運動を行ったほうが高まったことが示されています。つまり、脂肪燃焼は朝、筋トレは夜の方が効果が高いと言えそうです。

夜の運動は中性脂肪や高血圧を撃退する!?

男性を対象にした研究(Moholdtら、2021年)では、11日間、高脂肪食(脂肪からのエネルギー比率が全体の65%)を摂ることによって血糖値、インスリン、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の値が高まりましたが、高脂肪食摂取5日後から運動(自転車運動)を5日間、夜(午後6時30分~)行うことによって、これらの値が抑えられたことがわかりました。ところが、その効果は朝(午前6時30分~)に運動を行った人では見られませんでした。

また、こちらも男性を対象にした研究(Britoら、2019年)ですが、高血圧の治療を受けている50名の男性に朝もしくは夜のどちらかに有酸素運動(45分間)を週3回10週間行わせたところ、夜に運動を行った男性においてのみ血圧の低下が見られました

このように、夕方から夜にかけて行う運動には生活習慣病(脂質異常症や高血圧など)への対策の点でメリットがあると言えそうです。運動を行う目的が生活習慣病の予防や改善の場合は、夕方から夜にかけて運動を行う習慣を持つとよさそうです。

夜の運動は睡眠にもいい

就寝時間の4時間前まで運動を終えておけば、睡眠の質が改善されることもわかっています(Saidiら、2020年)。運動を行う目的が筋力向上や筋量を増やしたいことにある場合、睡眠によって疲労回復を促し、筋に効果的に超回復をもたらすためにも、夕方から夜にかけて運動を行うとよいでしょう。

運動は朝するべき?夜するべき?

運動習慣を持つことは、それを行う時間帯にかかわらず、まずは最も大切なことと言えます。これまでの研究が示しているように、時間帯によって運動がもたらす効果に違いが見られることもあるでしょう。ただ、しっかりと運動習慣を確立するためには運動を継続することが重要で、運動を行うことのできる時間が朝であれ夜であれ、ストレスなく運動を始められる時間を見つけることが最善と言えます。

1週間のスケジュールがある程度決まっているのであれば、その中で同じ曜日の同じ時間帯に安定して運動ができるように時間調整することも習慣化のコツです。運動を行うことの目的も考慮しながら効率よく運動時間を確保しましょう。

まとめ

仕事や家事・育児で忙しく、運動習慣を持てない女性は少なくありません。特に64歳以下の女性では、運動習慣を持っている人は5〜6人に一人と少ない傾向にあります。しかし、ご紹介したように朝の運動も、夜の運動もそれぞれにメリットがあります。また、いずれの場合もまずは継続して運動を行うことが重要です。時間がない人はまず運動の継続を目的として、時間に余裕がある人は運動の目的に合わせて運動の時間を確保できると良いでしょう。

監修者プロフィール

彦井浩孝NPO法人チャレンジ・アスリート・ ファンデーション理事長
彦井浩孝NPO法人チャレンジ・アスリート・ ファンデーション理事長

スポーツ栄養学の観点からも、運動やスポーツにおけるマグネシウムの働きには注目すべきところが多くあります。にがりを水や飲料に薄めて使用することで、スポーツや運動を楽しむ方が日常から手軽に海からの自然なマグネシウムを摂取することができます。

【プロフィール】
オレゴン州立大学健康人間科学研究科博士課程修了。博士(Ph.D.)。NPO法人チャレンジ・アスリート・ファンデーション理事長。横浜市病院協会看護専門学校非常勤講師。
専門は運動生理学・栄養学・トレーニング学。トライアスロン歴32年。

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