1日の塩分摂取量の基準とは?塩分の過剰抑制にも注意しよう
高血圧など生活習慣病予防のためとして、塩分摂取量の制限がよく叫ばれています。では、1日の塩分摂取量の基準はどのくらいに設定されているのでしょうか。また、塩分を摂らなさすぎる「過剰抑制」にも注意が必要です。これは、塩が身体にとってなくてはならないミネラル源なためです。本記事では、1日の塩分摂取量の基準や塩が体内でどんな働きをしているかについて解説します。
1日の塩分摂取量の基準
まずは、1日の塩分摂取量の基準を確認しましょう。
厚生労働省・日本高血圧学会の基準
厚生労働省によれば、1日の塩分摂取量の基準は以下のように定められています。
- 男性(18歳以上)…7.5g未満
- 女性(18歳以上)…6.5g未満
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
一方で、日本高血圧学会の推奨する1日の塩分摂取量の基準は、男女ともに1日6g未満です。これは高血圧の人だけでなく、血圧が現時点で正常の範囲内である人にも可能な限り推奨されています。特に、高血圧でなくても、既に糖尿病や慢性腎臓病などを発症している場合には、1日6g未満の塩分摂取量にとどめることが望ましいとされています。
塩のはかり方については、こちらの記事をご覧ください
WHO(世界保健機関)の基準
「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)の基準では、1日の塩分摂取量は成人で男女ともに1日5g未満とされています。主要な欧米諸国の塩分摂取量目安が概ね1日6g未満に設定されていることを考えると、WHOの基準はさらに厳しく定められていることになります。
塩の体内での働き
塩は体内で塩化物イオンとナトリウムイオンに分かれて存在し、それぞれ以下のような働きをしています。
消化・吸収を助ける
塩化物イオンは体内に入ると、胃酸のもととなって胃での消化を助ける働きをします。胃酸のpHは1と非常に強力な酸性を示し、これが食事や飲み物に混ざって体内に入り込んだ細菌を殺菌する役割を果たしています。また、ナトリウムイオンは小腸で、食物を分解して得た栄養素を吸収するのを助ける働きがあります。
細胞の働きを正常に保つ
細胞は細胞外液という液に囲まれています。細胞外液にはナトリウムイオンが多く含まれ、細胞内外の浸透圧を調整する働きをしています。浸透圧のバランスは、食べ物から栄養素を吸収するために非常に重要です。つまり、細胞が正しく働くためには細胞内外のナトリウム濃度のバランスを一定に保つ必要があります。ナトリウムイオンが多すぎても少なすぎても、栄養を十分に体内に取り込めなくなるほか、新陳代謝の悪化にもつながる可能性があるため注意が必要です。
刺激の伝達
温かいものや冷たいものを触ったり、手足など身体を動かしたりするときには、刺激を脳に伝えたり、脳から筋肉に動くように命令を送ったりするため、神経細胞が電気信号を伝える働きをしています。このとき、命令や刺激などの情報を電気信号として伝えるのにナトリウムイオンが必要です。
食欲や味覚を正常に保つ
適度な塩味は食欲を増進させます。また、塩味の刺激により、美味しさを感じる正常な味覚が保たれます。一方、塩分が少なすぎる食事を続けると、味覚が鈍くなって食欲が落ちてしまいます。食欲が落ちると体力が落ち、さらに食欲が落ちてしまう悪循環に陥ることもあります。
塩分不足になると何が起こる!?
通常の食事を摂取していれば、塩分不足に陥ることはあまりないと考えられます。しかし、過剰に塩分摂取を抑制しすぎたり、塩分を控えた食生活を送りながら夏場や高温多湿の環境などで多量の汗をかいたり、一時的に下痢や嘔吐で大量の体液を排出してしまったりした場合に、塩分不足の状態に陥ることがあります。
塩分不足の状態、すなわち体内に蓄えていたナトリウムが足りない状態になると、生命活動を維持するため、体内のナトリウム濃度を保つために体内の水分量や血液、消化液などの量を減らそうとします。すると、血液や体液の循環が悪くなり、以下のようなさまざまな不調を引き起こすことがあります。
- ・頻脈
- ・低血圧
- ・頭痛
- ・倦怠感、疲労感
- ・筋肉のけいれん
- ・昏睡
- ・消化液の減少による食欲不振、吐き気
また、ダイエットやトレーニング目的で運動を行う場合にも、汗をかいて体内のナトリウムが減少し、脱水症状が起こったり、筋肉が痙攣したりすることがあります。このような場合に塩分摂取を過剰に抑制しすぎると、やはり上記のような不調につながることも考えられます。塩分の減らしすぎにも、十分注意が必要です。
まとめ
1日の塩分摂取量は厚生労働省の目安で男性7.5g未満、女性6.5g未満。日本高血圧学会では6g未満、WHO(世界保健機関)では5g未満と定めています。しかし、塩には体内でさまざまな働きがあります。例えば、消化・吸収を助けたり、細胞の働きを正常に保ったり、刺激の伝達や食欲・味覚の正常化などが挙げられます。逆に塩分が少な過ぎると、頻脈や低血圧、倦怠感や疲労感、ひどくなると筋肉のけいれんや昏睡状態に陥ることもあります。塩分の過剰抑制には十分注意しましょう。