塩の産地にはどんなところがある?日本と世界の塩の産地を紹介
私たちが日頃身近な調味料として使っている塩は、どのような場所で作られているのでしょうか。日本では塩が海水から作られるということを知っている人は多いかもしれませんが、実際にどこで作られているかを知っている人は少ないのではないでしょうか。本記事では、日本と世界の主な塩の産地と作り方について紹介します。
日本には塩資源が少ない!?
そもそも、日本には塩資源が少ないとされています。塩資源の少ない日本では、どのようにして塩を確保していたのでしょうか。
岩塩や塩湖のない日本
海外の塩の産地では、岩塩や塩湖などから塩を取り出しています。しかし、日本にはこうした塩資源がなく、塩を得ようとするともっぱら海水から取り出すしかありませんでした。しかも、雨の多い気候から天日干しで塩を作るにも向かず、日本で作られていたのは海水を煮詰めて塩を作る「煎熬(せんごう)」という方法です。
「入浜式塩田」で有名な瀬戸内
日本で塩の産地と言えば、江戸時代の「入浜式塩田」で知られる瀬戸内海沿岸の十カ国(長門、周防、安芸、備前、備中、備後、播磨、伊予、讃岐、阿波)で、「十州塩田」と呼ばれました。ここでの製塩は昭和30年ごろまでの約400年にわたり、日本独自の製塩法として盛んに行われていました。
その他、地名に残る塩の産地
日本全国には、その他にも塩にまつわる物語や地名がたくさんあります。例えば、塩の産地として有名なのは前述の瀬戸内ですが、関東地方、特に東京湾周辺には「塩浜」という地名が多く残っています。これは、塩作りに使う砂浜のことを指し、やはり江戸時代ごろに生活必需品として塩が多く生産されていたことを物語っています。
世界の塩の産地【岩塩編】
ここでは、世界の塩の産地をご紹介します。まずは、岩塩がよく摂れる地方からです。
岩塩とは
大昔の地殻変動によって陸上に取り残された海水が、長い年月をかけて蒸発して固まった「海の化石」とも言えるものです。世界で最もポピュラーな塩の原料であり、鉱脈から直接掘り出したり、岩塩層をいったん水で溶かして汲み上げたりして採掘します。採掘した岩塩は重金属などの異物を含んでいることが多いためそのままでは食べられず、精製して食用にしています。
イギリス・チェシャー地方
産業革命後の18〜19世紀にかけて、イギリスは世界一の塩の生産量を誇りました。その中心地がチェシャー地方です。チェシャーは小さな街や村からなる農業地帯であり、塩以外にもチェシャーチーズの生産が有名です。現在は緑豊かな田園地帯になっており、塩の博物館があります。
ポーランド・ベリチカ
ポーランドのベリチカは、古くから塩の産地として知られています。町の地下には、現役の岩塩坑として世界最古の「ベリチカ岩塩坑」があり、世界遺産第一号に認定されました。塩の採掘は700年以上も続いており、現在でも規模は縮小されたものの、続いています。ベリチカ岩塩坑の内部はさながら塩の宮殿のように美しく、床や壁、天井、礼拝堂の祭壇、シャンデリアまですべて岩塩でつくられているという徹底ぶりです。
サハラ砂漠・マリ
サハラ砂漠はかつて西アフリカとヨーロッパを結ぶ古い交易路として賑わっており、その交易路の途中にあるのがマリ共和国です。塩は同じ重さの金や奴隷と交換されたほど貴重なもので、海から離れた砂漠の真ん中に、約2億年前に干上がったとされる塩湖が岩塩層となって埋もれています。サハラ交易は現在では衰退していますが、マリ共和国で採掘された板上の岩塩はかつてサハラ交易の拠点として栄えたトンブクツーの街までラクダのキャラバンで運ばれ、市場で売られています。
世界の塩の産地【塩湖・天日塩編】
次に、塩湖や天日塩がよく摂れる海外の塩の産地を紹介します。
塩湖とは
塩湖とは、地殻変動などによって陸上に閉じ込められた海水が長い年月をかけて濃縮されてできた、乾燥した地域特有の塩分濃度の高い湖です。例えば、観光スポットとして有名な「死海」には、海水の約8倍もの塩分が含まれています。塩湖から取り出した塩が湖塩と呼ばれています。
ボリビア・ウユニ塩湖
世界でも有名な塩湖で、標高3700mのアンデス高地に位置しています。乾季には四国の半分ほどもある広い湖面全体が塩の結晶で覆われるため、地理学的には塩湖ではなく塩原とも言うべきものです。塩湖がさらに乾燥し、濃縮されたもののことです。雨季の間は水が溜まって湖のように見え、静かな湖面が空を映し出す様子は「天空の鏡」とも呼ばれています。
天日塩とは
天日塩とは、海水を塩田に引き込み、太陽の熱と風で水分を蒸発させて塩にしたものです。日射量が多く雨の少ない乾燥した気候と、塩田を作るための広い土地が必要です。天候に左右されることが多いため、天日塩を均質化するのは難しいとされています。
オーストラリア・シャークベイ
西オーストラリア州で初めて世界自然遺産に指定された美しい海で、太陽と風の力を活用して天日塩が採取されています。シャークベイは年間を通じて降水量が少なく、日本に比べると約5分の1以下です。梅雨のような雨の多い気候の変化もさほどないため、海水を自然に蒸発させた天日塩の収穫ができます。品質も非常に良く、日本でも天日塩ならではのマイルドな味が人気を博しています。
まとめ
世界での主な塩の産出法といえば岩塩や塩湖ですが、日本にはこれらの塩資源が少なく、製法といえばもっぱら海水を煮詰めるしかありませんでした。日本での塩の産地といえば瀬戸内が有名ですが、東京湾周辺に残る「塩浜」の地名のように、かつては日本各地で生活必需品として塩が作られていました。一方、世界では岩塩や塩湖、天日塩の産地がたくさんあります。塩は生産法によっても味が変わるとされているため、ぜひさまざまな塩を味わい比べてみてはいかがでしょうか。